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 受験術について (12 Aug. 2008 up)


この「受験術について」は平成20年7月に鶴見大学歯学部6年生の有志参加者に対して行った特別講義の配布資料である。(文責:菅 武雄)

目次
0. はじめに
1. 勉強の進め方
2. 効果的なノートの作成法
3. 正誤確率法の導入
4. まとめ (補足:ショートスリーパーのすすめ)


0. はじめに

 卒業試験および国家試験受験に臨むにあたり、「受験」に特化した技術的な指導を強化することが今後の勉強および指導に有効なのではないか、という個人的な考えがあり、今回、受験術の1つとして、勉強の進め方についてのメモをまとめた。  学生さんの中には、これまで受験を経験したことが無い者や、正しい勉強方法の指導を受けたことがない者が散見されることもきっかけになっている。  本資料は「この方法が一番」とか、「この方法で勉強しろ」という用途に用いるのではなく、蓄積してきたノウハウとして勉強方法のいくつかを提示し、その中から個々の学生が自分の能力・スタイルにあった方法をこの時期に探してもらう、という趣旨である。これは出来るだけ早い時期、少なくとも夏休み前には知っておきたい課題である。  テーマとしては3点。勉強の進め方、ノート作成法、そして解法である。

1.勉強の進め方

1.問題集を用いる方法  
 問題集は2種類の編集方法で作られている。  1) 年度別に既出問題をまとめたもの  2) 分野別に既出・オリジナル問題を編集したもの  これらの問題集の活用は有用ではあるが、使い方に注意しないと効果的な勉強にならない。  一番非効率的な勉強方法は、上記問題集を第一問からただ順番に解いてゆく方法である。この方法の欠点は、問題を解いたことで理解した気分になってしまうことで、一度見た問題は次も解けるように錯覚してしまうことである。また、内容の理解とは別に、問題そのものを覚えてしまい、2回目に解くときに考えずに答えてしまうようになる。成績の伸びない学生の多くがこの漫然とした勉強方法で時間を損しているのではないかと推察している。  問題集の効果的な利用方法は、解きながら各選択肢に「○」か「×」をつけ、あいまいな場合は「△」をつけるか、正誤の確率をつける(→後述:正誤確率法の導入)。また、最終的に答えを出す前に問題文・選択肢に「知らない単語」「あいまいな単語」がないかを確認し、あればマークしておき、後にピックアップする(→後述:効果的なノートの作成例)。   答合わせは「当たった」「外れた」ではなく、各選択肢に対して「理解していた」「理解が足りなかった」「知らなかった」の評価をつける。受験ノート作成時には後者2者のキーワードを転記する(→後述:効果的なノートの作成例)。
2.教科書を用いる方法
 教科書を最初から読む勉強方法もあるが、それは5年間の勉強の蓄積があり、かつ記憶力の良い人の勉強方法。ここでは頁をめくりながら、問題集では関連を知ることができなかった項目について勉強する方法を紹介する。  教科書は関連する項目がまとめられ並んでいる。骨は骨としてまとめて記述されているし、腫瘍は腫瘍としてまとめられている。卵円孔の隣には棘孔が並んでいるのである。例えば、模擬試験で卵円孔が出題されて間違えたので復習したとしても、国家試験では棘孔が出題されるかもしれない。教科書で勉強した者は卵円孔も棘孔も同列に学んでいるのであるからどちらの問題も解けるだろうという考え方である。  関連する項目は一度グループとして把握しておくのが知識の枝葉を広げる方法である。教科書は、関連する構造や疾病のグループを個別に把握するための勉強方法に適している。  この方法では、小項目タイトルや図表写真に注目する。これらに目を通してゆくのだが、小項目を見て「この項目はあまり知らないな」というものをピックアップしてノートに転記する(→後述:効果的なノートの作成例)。教科書の図表写真に関しては、見ただけで何を意味(説明)しているのかをイメージとして学習する。
3.問題演習・模擬試験を中核にする方法
 比較的自分の勉強方法が確立している者の中には、国家試験問題集を購入せずに国家試験に合格した者達がいる。彼らは日々の演習で出題された問題や数回行われる模擬試験を無駄にせず、それらを足がかりに歯科医学全範囲を網羅する勉強方法で成績を上げていた。彼らに共通するのは、闇雲に問題を解くのではなく、出題の意図を理解するための勉強法を採っていた点である。  基本的な戦術は、理解不足のキーワードを抽出し、関連する分野に知識を広げ、暗記が必要な部分は繰り返して学習していた。演習・模試で間違えた問題は切り抜いてノートに貼付し、「なぜ間違えたか」を徹底的に分析していた。完成度の低い(不適切な)問題は即刻見切って捨て、無駄に悩む時間を良としなかった。また、選択肢1文ごとに分析を行い、自身の理解度が低いと判断した場合は、その1文の範囲を図書館で終日調査することも希ではなかった。  要は自分の弱点を知り、そこを強化することに重点を絞っていたのである。日々の演習や模擬試験を無駄にするのはもったいない。
 4.グループ学習の効果
 成績が同程度の仲間でグループ学習を行うのも効果的な勉強方法である。セミナー室やファミレスなどで定期的に集まるのである。その場では個々の勉強を進めるのであるが、時々、自身の理解不足の部分や、逆に強化した部分について話題を提供し合う。  例としては「○○について知ってる?」と振るのである。その話題に興味がなければ自分の勉強を続ければよい。中には「そういえば、この前の模試で間違えた。教えて」と反応するメンバもいるかもしれない。そこから枝葉を広げながら、相互に知識不足を補完してゆく。「やっぱり判らない」ということであれば、分担して調査したり、分析したりすることも効果的。暗記物の表を担当した学生が業者模試で小児歯科、衛生・社会歯学で満点をとったりするのである。自分の勉強の進行度を知ることができるのも動機付けになる。その場にライターを招待して細かな個人教授を受けることも教員によっては対応してくれるであろう。  とにかく「良い仲間」と行動を共にすることが重要である。自分の一生がかかった大切な時期である。自分の将来を考え、友人やグループを選ぶことも時には必要である。チューターにはそのような相談も積極的にすべきだと考える。  一人でコツコツ勉強するのも大事だが、時にはグループ学習も利用してみてはいかがだろうか。大学はそのような場を提供する用意がある。利用しよう。

2.効果的なノートの作成法

 ここで紹介するノートの作成法は、一例として紹介するのであって、この方法がベストというわけではない。しかし、この方法を採用して短期間で模試の得点を20点上げ、次のステップに軽く進んだ者もいるので参考になると思う。
1.ノートを1冊だけ準備する  
 ノートは1冊だけ作る。分野ごとに作ってはいけない。すべてを1冊で行うのがここで紹介するノート作成法である。1冊に集約する理由は、関連する項目の「つながり」を分野にとらわれないで行うこと、そして時系列にデータを蓄積することが目的である。ルーズリーフノートは記憶の順番と一致しない(記憶システムを混乱させる)ので適さない。
2.ノートは小さいサイズ
 ノートは常時(24時間)携帯する。比較的小さめのノートがよい。B5では大きすぎる。HANDY PICKなどのコンパクトで安価、かつ書き込みやすいものがよい。
3.1頁1項目
 各頁のトップにはピックアップしたキーワードを1つだけ日付と共に書く。キーワードは問題集から、教科書から、そして模擬試験で間違った問題から抽出されてゆく。このキーワードは「その時点で理解度の低い分野」を表現している。
4.関連キーワード
 トップのキーワードに関連する項目をリストアップしてゆく。例えば、トップが「根面う蝕」であれば、リストされるのは「アタッチメントロス」や「グラスアイオノマーセメント」といったものが並ぶであろう。各キーワードには簡単な解説をつける。前出アタッチメントロスには「歯周疾患」や「プロービングデプス」など。  関連する用語をリストすることで、理解の範囲を「主題に関連づけながら」広げることができる。関連暗記法は正しく活用できれば、円周率数万桁の暗記を可能にするほどの可能性を秘めている。
5.解説文
 トップのキーワードの解説メモを記入してもよい。トップが「根面う蝕」であれば、「アタッチメントロスとの関連。要介護高齢者では介助によるケアと治療が重要」などと書く。その解説文のキーワードにはアンダーラインを引き、関連を重視する。先の例では「要介護高齢者」にアンダーラインが引かれ、「要介護高齢者」はトップのキーワードに転記することになろう。そこからは「介護保険」「訪問診療」と関連した枝葉が広がってゆくのである。

【ノートの活用法】
 このノートはキーワードをリストアップするのが目的ではなく、毎日、このノートを最初から目を通すのがこの勉強法の「キモ」である。これは毎日行う必要がある。小さなノートであるので、目を通すだけであれば、通学途中、食事をしながら、就寝前に、そして、トイレに入っている時でさえ可能である。  各頁のトップのキーワードだけを見て、その頁に記載されている項目を思い出せるようになるまで繰り返し見直す。完全に理解し記憶した頁にはマークをつけ、次の見直し時には飛ばしても良い。(再学習が必要になったらマークを二重線で消す。学んだけれど忘れた、という苦手項目の印になる)。  ノートに記載した順に繰り返し学び、覚えたものは飛ばすことで、記憶の失われやすいもの、暗記できていないものが選択的に繰り返しの学習の対象になる。  1冊目のノートは比較的早く一杯になるであろう。2冊目に移るわけだが、その時に前冊の項目で十分に理解しきれなかったキーワードを再度ピックアップする。勉強開始当初は、重複するキーワードが多い。しかし、勉強が進み、理解が深まるにつれてキーワードが変わってゆくことに気がつくであろう。それこそが「実力」を実感する場面なのだ。進歩を感じることが自信にもつながるし、強い動機を維持させてくれるであろう。

【時系列に記録してゆく理由】
 学習の時系列でノートを作成する理由は、理解と記憶が時間の経過と共に変わってゆく点を利用するためである。教科書の章立てで受験ノートを作っても、理解している部分と理解していない部分が混在してしまい、これらを分離することは難しい。結果としてそのまとめ方は無駄が多い。また、時間と共に記憶は失われてゆくのであるから、教科書の項目の並びでノートを作る方法は(卒業試験・国家試験対策の)受験術としては適さない。  本法においては、時系列でキーワードをリストしてゆくので、記憶から失われやすい古い情報から繰り返して記憶を補強できる。また、頁内の記述を場所として記憶する「場所法」を組み合わせることで、海馬特性をも利用した暗記法で学習することができる。

3. 正誤確率法の導入

 ここで紹介する解法は、あまり一般的ではないだろう。批判を受ける部分もあるかもしれない。だが、難易度の増す試験をパスするためには、どんな小さな工夫も導入すべきだ、というのが著者の考え方である。判断は個人に任せる。  

 試験にギャンブルは必要ない。理想は、常に各選択肢に100%の「○」か「×」を答えられることである。しかし、迷った時にどうするか。そこに受験技術が必要になる。  迷った時に「勘」に頼るのが最悪の選択である。試験はギャンブルではない。知識および理解が不足しているレベルでは「勘」は通用しないと考えてよい。「勘」を蓄積することはできない。「勘」は再利用することができない。受験術における「勘」は、十分に学習してきた者のみが、記憶の断片を組み合わせて導く結果である。一般人の「勘」にはあまり価値がない。  では消しゴムサイコロや鉛筆ころがしによる「運」に頼るのはどうか。これもまったく成功率が低い。常に2割程度しかない運に賭ける意味はない。この状況で必要なのは1%でも正解の確率を上げることである。   諸君は「勘」と「運」は排除したほうがよい。頼る相手ではないのだ。
 ここで紹介する正誤確率法とは、各選択肢に対し、自分の知識の限界まで悩んだ上で正解度(もしくは誤答度)を与えるのである。八方塞がり状況の中で自分の知識を最大限に活かすための「悪あがき」ともいえる。  たとえば、選択肢の2つがほぼ互角で正解に思えた時、どちらかを選ばなくてはならない。この場合、実は正解を選ぶ確率は2分の1ではない。これまで勉強してきた知識があるからだ。(ちなみに、勘でも籤でも平均確率は2分の1に収束。これ以上の確率は望めない)。この時には「聞いたことがある」「忘れちゃった。何だっけ」といった情報だけでも価値がある。それを数値化すると52%と56%といった具体化された僅差で後者を選択することができ、正解の確率は格段に上昇するであろう。普段の勉強が「差」となって表れるのがこの瞬間である。  日常の勉強を常に「選択肢の正誤」と「キーワードの理解と拡大」に努めることで自分の理解度を意識することができるようになる。その結果として正誤の割合が導き出せるようになる。  今年度より導入される6肢問題やスーパーX問題への対応としても、少しでも確率を上げる努力を続けよう。  多肢選択問題は難易度が思った以上に高い。視覚情報としても5列と6列では圧迫感がまるで違う。選択肢の1つでも確実に消去できれば確率を上げることができるだけでなく、精神的にもラクな戦いにすることができる。  新方式のスーパーXは選択数の指示が無く、しかも選択数は0から5である。選択数0の問題はマークシート対策も含めて非常に悩む出題形式だ。これに慣れるには相当の訓練が必要だ。難易度が増しているのだから、受験する側も限られた能力・時間を最大限に活かす方法を模索し続けたいと思う。  正誤確率法の次の問題点が「修正」である。  問題を順次解いてゆく。どうしても納得できない問題に出会ったとき、とりあえず、その時点での答を出し、問題文に「?」マークをつけておいて次の問題に進む。それは1問に使える時間が限られているからだ。最終問までたどり着けないというのはもったいない。解かない問題の正解率はゼロだ。とりあえず最終問まで解き、それから「?」をつけた問題に戻るほうがよい。この場合のテクニックとして、まったく選べなかった問題には「×」を、再考の余地あり問題には「?」をつけるなど、レベル分けをして優先順位をつけておく。最後の1分に見直すのはどの問題か、それを自分で決めるのだ。  問題は、一度選択した答えを変更するかどうかの判断。よく言われているのは、よほどの理由がない限り変更しないほうが良い、という言い伝えがある。実は、正誤確率法でもその考え方を支持する。一度行った選択は、そこに理由があったはずだ。それを変更することには慎重であって欲しい。最初の選択時に何を考えたか、どのように判断したかが明確に記憶(記録)されていて、かつ、新しい情報(記憶)により正解の確率が必ず高いと言い切れる時のみ、解答を変更してよい。確証がない変更は改悪だ。これからの模試で多く経験してみて欲しい。

 ところで余談であるが、受験に限らず、将来の臨床(対患者さん)においても、歯科医師としての人生すべてにおいても、ギャンブル体質は常に失敗の選択に収束する。肝心な場面でギャンブルするのは愚かなことだ。日常の中からギャンブル性を排除するようにしよう。

4. まとめ

 時間は常に不足しているが、国家試験合格は達成可能な目標として君たちの前にある。時間的なエンドポイントの設定はすでに成されたのであるから(もちろん平成21年2月7, 8日!)、限られた時間と能力を十分に活用して、この目標に向かってゆきましょう。     

【補足】ショートスリーパー(短時間睡眠)の手法  
時間をうまく使うための工夫→ 睡眠時間をどう考えるか  
睡眠周期(sleep cycle) :90分周期のレム睡眠(眠りが浅い)   
 →睡眠周期を考慮すると、睡眠時間は6時間もしくは4.5時間  
午前2時台を睡眠時間に含めた自分の睡眠サイクルを構築する  
昼寝も効果的。昼食後。20分程度。  
ショートスリーパーは訓練でつくられる。


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