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 高齢者歯科診療の流れ

31 Dec. 2000 版

主訴

診査

診断

診療方針決定

治療計画立案


主訴

 患者は何らかの訴えをもって来院する。患者の訴えの主たるものを主訴といい、どのような悩みをもって来院したのか、言い換えれば、どんな患者なのかを知るための基本項目である。初診時の主訴は診療のスタートとして重要で(患者自身が意思表示できない場合を除いて→注釈)主訴なしに診療はない。主訴を捉えることは、患者とのよい関係をスタートさせるきっかけとなる。

主訴は毎回の診療毎に異なってしかるべきものであり、主訴の把握は毎回の診療毎に聴取され記録されるべきものである。

主訴は患者の言葉そのものを記録することが望ましく、診療録の記載は、記録者の言葉と区別することが望ましい。しかし,患者の表現が冗長であったり,混乱がみられる場合には,医学用語で簡潔に置き換えてもよい.(→注釈:記載例

主訴と診療希望の区別は明確にする。(→注釈:主訴と希望


診査

主訴を中心に診査を進めるが、主訴のみでなく、患者を全人的にとらえる。最新の医療モデルに当てはめ、病的なものすべての発見に努める。

診査は口腔外診査と口腔内診査に大別される.口腔内診査は1歯単位,歯列,咬合と進める.異常所見は,複数の診査方法で精査し矛盾があれば再診査もしくは追加診査を行う(例えばプロービング値とレントゲン所見の矛盾による再診査など).

ネガティブ所見,すなわち「異常所見なし」の記載も重要.



診断

 主訴に対する診断を優先する。患者に病的な問題点が多数存在する場合でも、主訴に対する診断が患者把握に重要である。
その他の疾病についても、そのすべてに診断を行い、診断名をつける。診断名は保険用語や略称を用いず,正確に医学用語で記載する.
 診断は,その過程で変更や修整が行われる場合もあり得る.


診療方針の決定

高齢者に対する歯科診療は、処置方針立案のステップにその最大の特徴がある。
高齢者の場合,診査により発見されたすべての疾患に対し診断を下すが、すべての疾患を治療・診療の対象にするわけではない。
患者の身体的、肉体的、社会的,経済的条件によって、種々の制約があり、行なう行なわない、行なうならばどのような方法で、などを決定するのが処置方針の決定である。ここの患者の有する「条件」を加味するステップと言える.
 具体的に使用する薬剤や,服薬管理,条件などもこの段階で決定する.

 「通院困難」という患者の条件も,この段階で考慮される.通院が可能なのか,搬送手段の考慮が必要なのか,入院下治療になるのか,訪問診療の対象とするか等を決定する.

 ディシジョン・メイキング (Decision Making) と言われるステップである.



治療計画立案

治療計画は処置方針に則り、行なう処置に優先順位をつけたものである。治療計画は(症状や主訴の変化により)しばしば変更されるものであり、担当する医師によって異なる場合もあり得る。来院時の主訴によって治療計画の変更・追加修整も行われる.

治療計画が処置方針から外れることはあり得ない。


【注釈】

意思表示ができない患者

 「主訴がなければ診療はない」という原則が適用されない場合がある.自らが「痛み」などを訴えられない患者の場合である.植物状態や脳死状態,痴呆患者や知的障害を有する場合である.そのような場合は,こちらが1歩踏み込んでゆく必要があり,要治療であると判断された場合には,入院先病院・施設・家族の同意を得たうえで診療の対象とする場合がある.

主訴記載例

 患者の言葉そのものを記録するときには二重カッコ『』で,こちらの言葉に直した場合には一重カッコ「」で記載する方法がある.患者の表現が『右の奥歯が痛くて食事ができない』場合は,そのまま記載可能と思われるが,『右上の前歯が痛くて,頬を押すと右目の下が痛いこともある.下の歯が痛くも感じるし,耳も痛くて口を動かすと痛い』というような関連痛や錯誤が混在すると考えられる場合には,「右前歯の痛み」と簡略化し,現病歴・現症に詳細を記載するほうが,記録としては良いと考えられます.

主訴と希望

 主訴と希望は分離して考えることが望ましい.これは,医学的対応の範囲を決定するという側面がある.
『私の目は不浄なモノを見てしまったので摘出してください』という訴えに同意する医師はいないであろう.しかし,それに近い間違いを犯す場合があることに注意する必要がある.「痛いから歯を抜いてください」の類である.
 もう1例挙げよう.「宗教上の理由から,特定の処置は拒否する」という希望があったとする.我々はどう対応すべきか.
手術自体は,患者にとって絶対必要で,かつ受ける意思もある場合,医療側としては判断に迷う.現実的には,拒否している特定の処置を行わないですむ方法を検討し,手術自体は行うという対応が実際に行われた.その検討を行う方向性自体に意味がある対応だったと思う.医療サイド,患者サイドの双方に納得できる手段と結果が得られるかどうか,が問題だ.

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